私たちは韓国へ入国する際、韓国の税関と 入国管理局の問題に苦しみましたが、実際には韓国へ向けて角島からカヤックで離陸する時点でそのことについては把握していたのです。出発の1ヶ月前から e-mailで関係機関とやり取りを重ねましたが、関係者からの返事は一貫して”NO”でした。先方の根拠は韓国の関税法第135条でした。そこにはこの ような記載があります。
—韓国関税法より抜粋– ref: http://www.geocities.jp/koreanlaws/kanzei.html#%91%E61%8A%BC%81@%93%FC%8Fo%8D`%8E%E8%91%B1 第2節 船舶及び航空機
第1款 入出港手続
第135条(入港手続)①外国貿易船又は外国貿易機が開港(第134条第1項但書 の規定により出入許可を受けた地域を含む。以下同じである。)に入港したときは、船長又は機長は、船用品又は機用品の目録、旅客名簿、乗務員名簿、乗務員 携帯品目録及び関税庁長が定める積荷目録を添付し、遅滞なく税関長に入港報告をしなければならず、外国貿易船は、船舶国籍証書及び最終出発港の出港免状又 はこれに代わる書類を提示しなければならない。ただし、税関長は、監視・取締りに支障がないと認められるときは、船用品若しくはは機用品の目録又は乗務員 携帯品目録の添付を省略させることができる。
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現在の日本の法律では重さ100kgにも満たない私たちのカヤックを国際船舶として見なすことはできず、書類の提示はできません。つまり入国できない、となってしまいます。
こ のような法律の大前提は釜山港に、というより韓国に「シーカヤック単独での」入国が行われたという前例がなかったためでした。過去に日本から韓国へのカ ヤック遠征はありましたが、その際にはサポートボートが同行しており、シーカヤックはその同行船の「船荷」であり、シーカヤックの漕ぎ手はあくまでその船 舶の乗員であり、人力で進んできた漕ぎ手とカヤックは船として扱われなかったようです。
ここでみなさん思うでしょう、「ではその時カヤック はどうなったんだ?」と。過去の例では日本の港を出た時点でカヤックは船の上にあり(まさしく船荷)、沖に出てからカヤックを船から海上に降ろして遠征を 始め、釜山港に着く直前でもう一度海から船に上げられたとのことでした。
私たちの遠征以前では、この不思議に思える方法がカヤックで韓国へ 向かう唯一の方法であり、それを実施するにはなんと75万円の費用がかかるのです。このように、私たちはこの複雑な事態と入国の見込みのない事態を把握し ていましたが、知らなくて幸せだったというべきでしょうか。私たちはそれでもシーカヤック単独での入国を実施してみたかったので、1ヶ月後、角島から釜山 に向けて離陸したのです。