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康司の遠征日誌 4

サポートすることを決めた以上はこの遠征を成功させるために様々な準備を僕自身も始めなければならない。マイクのトレーニングもそうだが全盛期からはかけ 離れた僕のパドリングパフォーマンスも取り戻さなければならない。僕も41歳になった。落ち行く体力に歯止めをかけ、それをカバーする精神力も鍛える必要 もある。
そして遠征に必要な装備や資金の問題。僕が海外遠征をする際に基準とする資金はだいたい100万円程度。それを高いと感じるか安いと感じるかは人それぞれ だが、たくさんのポーターや隊員を伴う高所登山や高額な移動手段や飛行機のチャーターを必要とする極地遠征でなければ、世界中どこでも個人的な遠征であれ ばこれくらいで収まるのではないだろうか。

基本的な資金の工面はマイクが行うことにはなっていたが、マイクも英語学校に所属する講師でもあるし本国への仕送りや奨学金の返還などありお金はほとんど持っていなかった。
韓国遠征に必要な資金をざっと見積もったところ70万円くらい必要であったがそれを用意できる目途はまったくなかった。
そういった問題については装備品はできるだけスポンサーからの提供で補うことにして足りない資金は今回の遠征の趣旨に賛同してくれた人からの寄付という形で用意したいとマイクは言った。
正直僕自身は一般の人からの寄付という形でお金を提供してもらうことに以前から相当な抵抗があった。その理由に個人的な遠征程度のお金なら自身の努力次第 で用意することは充分可能だということが一つ。そして自分個人の夢を実現するために他人のお金を頼りにすることはなんだか申し訳ないという気持ちになって しまう。

最近はインターネットの発達でクラウドファウンディングのような様々な夢実現サイトが存在し寄付を募っている。それをする人たち自体を否定する気持ちは全くないが自分がそれをできるかといったらおそらく躊躇してしまうだろう。

マイクは26歳。まさしくインターネット世代。マックプロを完璧にこなしHPを立ち上げフェイスブックページで自分の遠征を表現し始めた。まったく屈託の ない意志で純粋に自分の夢を他人にはなし、賛同を求める。寄付を求めることにも抵抗はない。各地で開催される環境イベントにも欠かさずブースを出し表現を 続けた。同時にビーチクリーンも定期的に続けていきライフリサイクルドという任意団体を立ち上げ、毎回30人ほどの若者たちが楽しく活動しているようだっ た。
オリジナルT-シャツを知人のデザイナーにつくってもらいその売上げを遠征資金にもしていった。
それを見ているうちに、ああ個人的な寄付を求めるということはまた遠征の趣旨を広げるという意味もあるのだなとすこしづつ納得するようになってきた。特に 今回は海洋漂着ゴミを世間に知ってもらうことがメインテーマでもあり寄付という形でこの遠征に関心を持ってもらえるようになってきていたことは確かだ。た くさんの人からこの挑戦に対しての言葉を頂くようになっていた。

企業スポンサーについても最大の資金のかかる遠征用ダブルカヤックはウォーターフィールドの水野さんがホエールウォッチャーのレンタルを快く快諾して頂いた。国内アウトドアメーカーのモンベルも遠征で使用できそうなキャンプ道具すべての提供を決めて頂いた。
アメリカ人という利点を生かしマイクは僕が必要だと挙げたすべてのアメリカを拠点とするアウトドアメーカーに電話をかけた。
ニンバスパドル、NRS、スナップドラゴン、シアトルスポーツ、ジャクソンカヤックスなどから商品の提供が決まった。

装備と資金は遠征の実現に向けて着実に準備が整っていった。
さあ、あとは僕たち2人の海峡を漕ぎ渡る技術と体力をつけていかなければならない。

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